大判例

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大阪高等裁判所 昭和58年(ラ)239号 決定

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【説明】

消費者破産における免責事由についての最新の論文として、山内「破産免責の実務的研究(中)―消費者破産を中心として」本誌四九八号二二頁がある。

【判旨】

一件記録及び当審における抗告人に対する審尋の結果によれば、抗告人は、視力障害のある身体障害者の夫が営むマッサージ業の補助者をしていた者であるが、昭和四〇年ころから夫とともにいわゆるサラリーマン金融業者(以下「サラ金業者」という。)からの借金を重ね、昭和五五年ころには借受金合計が約一〇〇万円になつていたところ、同五六年に知人の竹谷絹子がサラ金業者から借り受けた債務につき連帯保証人となつたことも加わり、同年七月ころには債務が一七〇万円に達して、債務超過が明らかとなり、借金を重ねることなくしては利息の返済もできず、生活費にもこと欠く状態であつたにもかかわらず、そのころ以降昭和五七年五月までの間に、新規業者からの数件の借入れを含め合計五十数回に及ぶ新規借入れ及び相保証を続け、同年六月二日ころには負債総額七七七万九〇〇〇円に達した時点で夫ともども突然家出して債権者から身を隠し、同月二九日に自己破産の申立てをして、同年七月三〇日大阪地方裁判所において破産宣告と同時に破産廃止の決定がなされたこと、原審においては六八名の債権者(サラ金業者)のうち三名が本件免責申立てに対する異議を申立てたが、その後警察官である三男の利男が分割支払を約したため、右三名とも当審において右異議申立てを取り下げたこと、抗告人が昭和五六年七月以降に新規借り入れるについては、支払不能の状態にあることを各サラ金業者に説明することはなかつたのであるが、業者の中には借入件数の多数あることを承知しながら積極的に金融を申し入れたり、抗告人の負債状況に関する情報を得ながら金融に応ずる者も多かつたこと、をそれぞれ認めることができる。

右事実関係のもとで考えるに、破産宣告前一年内に抗告人が借金を重ねた件数、金額、使途、家出直前まで借入れを続けたこと、間もなく自己破産の申立てをしたが手続費用を負担することもできないほどの資産状態になつていたことに照らせば、抗告人には破産法三六六条ノ九の二号に該当する事実(消極的態度で相手を誤信させた場合も含むと解する。)があつたと推認できなくもない。

しかしながら、抗告人が身体障害者であること、債権者はすべてサラ金業者であること、その中には抗告人が支払不能の状況にあることを承知の上で金融に応じた者も多数あると思われること、抗告人の債務中には他人の債務保証分もあること、原審で免責申立てに異議を申し立てた者が当審においてその異議申立てをすべて取り下げたこと、抗告人の家族が一部の支払に協力することとなつたこと、を考慮すれば、抗告人の債権者に対する加害的行為の違法性はむしろ軽度のものと見ることができ、本件の場合前記事実関係のもとで免責を不許可とすることは相当でない。ほかに破産法三六六条ノ九所定の免責不許可事由は認められないから、抗告人の免責は許可すべきである。

よつて、右と結論の異なる原決定を取り消し、破産者である抗告人を免責することとして、主文のとおり決定する。

(荻田健治郎 堀口武彦 渡邊雅文)

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